09ー孫文と清帝国と日本

09ー孫文と清帝国と日本

孫文とは、当時の中国民主革命のリーダーであった人物です。中国南部の揚子江沿岸にある広東(香港のある省)の出身です。満州民族による征服王朝であった清帝国からすれば、孫文は被支配層の漢民族の一人です。中国の民主革命は、民主主義の大義名分の下での革命でしたが、同時に、被支配層の漢民族にとっては、支配層の満州民族からの民族独立闘争でもありました。

孫文は、中国の清帝国末期、イギリスやフランスなどアジアへ進出していたヨーロッパ諸国との戦争が続いた19世紀中頃、1866年に生まれました。孫文は当時の中国の破滅的な状況の中、最も深刻な原因がアヘンであったことは理解していたはずです。それはアヘンはイギリス乃至はイギリス国籍のユダヤ商人達が流通していたからです。清帝国は2度のアヘン戦争に敗北し、弱体化の一途を辿るにつれ、中国が混乱していくのを目の当りにして育ったでしょう。これが孫文という人物が民主独立革命を率いていく背景にあったといえます。

孫文と日本

孫文は民主独立運動を推し進めるにあたり、当初は、日本に支援を求めました。日本は、徳川幕府(絶対王制)から民主共和制に無血移行(無血革命=明治維新)への政権移譲を成功させています。孫文は親日であり、明治維新を非常に高く評価していたと言われています。そのため、当初は、中国で、日本の明治維新を展開しようとしていたのでないでしょうか。そのため、孫文は民主独立革命の早い段階から日本との関係を築こうとしていたようです。

孫文は、1900年には、玄洋社の宮崎寅蔵(宮崎滔天)という日本人と共に中国の恵州で革命反乱を起こしています。大政奉還の際と同様に、孫文の故郷である中国南部で、民主独立革命の武装蜂起を繰返し、弱体化した清帝国に対し、南北戦争の危機に追い込みます。弱体化した清帝国としては、植民地化危機を抱えながら、中国を南北に分断するような深刻な内戦は避けたいでしょう。そこを突いて、清帝国にまずは揚子江以南、中国南部地域の分離独立を認めるように仕向けるというシナリオだったのではないでしょうか。その上で、分離独立後に、北部への軍事侵攻を行い、清帝国を満州地域へ追い返すのです。1894年に日清戦争で日本が清帝国に勝利した後、清帝国とは表向き敵国関係にあった日本に、南部地域の漢民族の民主独立運動の支援を求めて来日しています。孫文は非常な親日家でした。

玄洋社の宮崎寅蔵(宮崎滔天)は、中国の漢民族と協力体制を取り、アジア植民地化を図るヨーロッパ諸国に対抗しようと考えていたかも知れません。日本の政治家にもそうした方向性を探る人々もいたようです。

孫文とイギリス

孫文は中国で1895年の武装決起失敗後に、日本に亡命しています。その後しばらくは日本で民主独立革命の組織結成や革命資金の調達など活動をしていました。しかしながら、日本政府は清帝国との関係性を重視し、最終的に孫文の日本での活動を禁止する方向で動きます。そのため、孫文は、独立支援をアメリカに求めて行きます。アメリカはイギリスから民主独立革命により成立した国だからでしょう。

孫文は、ヨーロッパ諸国によるアジアの植民地化の深刻さについては、危険性の認識が余り無かったかも知れません。アメリカで国籍を得た後は、イギリスなどヨーロッパ諸国にも出向き、民主独立革命への協力を求めていたようです。孫文のこうした民主独立革命の活動支援を求める動きにより、中国の揚子江周辺以南の地域を本拠地とする漢民族が、中国で植民地化を進めるイギリス、フランスなどのヨーロッパ諸国と手を結ぶ構図が出来上がって行きました。

一方、清帝国では、孫文の民主独立革命の動き以前に、南部の漢民族がヨーロッパ諸国と手を結ぶ危険性については理解してたでしょう。清帝国は江戸時代より日本との関係が深かった国です。情報交換もあったでしょうし、徳川幕府が大政奉還を行った「真の理由」についても理解していたでしょう。清帝国は、イギリス、フランスとの戦争に負け続ける中、要は、孫文よりずっと以前から、ヨーロッパ諸国による中国の植民地化を阻止するため、また、清帝国の存続のためにも、日本へは協力と支援を要請していたと考えるべきでしょう。

当時の日本は、中国の反政府派と政府派の両方から、協力支援の要請があったといえるでしょう。日本は、反政府派の孫文と決別し、政府派(清国)と手を結びました。 その様な状況の中、孫文が日本亡命で中国を不在にしている間に、南部地域の漢民族が、革命活動の「支援者」としてヨーロッパ諸国と結びついたのでは無いでしょうか。そのため、日本は孫文との関係は、表向きは友好的であっても、実質的には敬遠する構図となったと言えるでしょう。

 

 

にほんブログ村 歴史ブログへ
にほんブログ村

日本ブログ村に入村しています。

読み終わったらクリックお願いします。